仮差押と債権譲渡

先日、以下のような相談を受けました。

  • 金融機関Aからの借入返済を滞り、所有している不動産に仮差押を受けた
  • その債権はAから、サービサーBに債権譲渡された
  • 債権譲渡後もA名義の仮差押が付いたまま数年間経過している

このA名義の仮差押を外したい、という相談でした。
前提知識として、AからBに債権譲渡されると、債権譲渡に付随して抵当権やその他の権利(保証人への請求権、差押など)は、AからBに承継されます。

 しかし、新債権者Bは、「仮差押」だけは承継できません。
ちなみに「差押」は承継できます。(ややこしいですが)

Bが裁判所に、債権譲渡があったので、A名義の「仮差押」を、B名義に書き換えて欲しいと申立てをしても、それはできないと言われます。(まれに裁判所が誤って、承継されてしまう事例があります。)

債務者からすると、新債権者のBから請求は来るわ、昔のAの仮差押は付いたままなのでどうすればよいか、と苦悩します。

 このような場合には、どのようにするのがようでしょうか。
これを新債権者Bに相談すると、Aの仮差押の抹消を含め、譲渡された債権について和解の話をしましょうとなります。

 しかし、Bからの請求を無視している場合には、Bに相談はできません。
Bと接触してない場合には、裁判所に対し「保全取消の申立」をすることです。
申立の相手方はBではなくAです。
保全取消の申立とは、分かりやすく言うと、仮差押の名義人Aに対し、裁判所を通じて「仮差押を取下げろ」と訴えることです。
訴えられたAは、債権は売ってしまっていて、すでに債権者ではないので、仮差押を取下げざるを得ません。

 今回の相談者の例でも、当事務所で保全取消の申立書を作成して、裁判所に提出したところ、Aから「うちはすでに債権譲渡して関係ないので、すぐに仮差押を取り下げます。」となりました。

 今回の相談者は、すでに時効も成立している期間、Bとは連絡を取っていなかったため時効を援用し、借用書もBから返してもらう(債権証書の返却)結果となりましたが、一般的にも「保全取消の申立」で対応できるでしょう。

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