現代の地面師の詐欺事件

 「地面師」と聞いてどのようなイメージがあるでしょうか。今年:平成27年1月に、次のようなある不動産をめぐる詐欺事件がありました。これが現代の地面師でしょう。一昔前の地面師は、法務局に行って簿冊の手書きの登記簿に細工をして、詐欺をはたらいていたのでしょうが、現代の地面師は、一言でいうと「本人なりすまし」です。

【事件の概要】

・対象は都内のある土地(時価数億円)
・所有者は法人
・売主として必要な書類:登記識別情報 会社の印鑑証明書 社長の本人確認書類(運転免許証)はすべて偽造
・上記書類をもって、所有者本人になりすまし、買主に売買代金を払わせ逃げて、数億円を巻き上げようとしましたのですが、決済の立会を頼まれた司法書士が優秀で書類の偽造を見抜き、犯人は逮捕されました

【経緯、顛末】

買主に話が持ち込まれた時から、売主が決済を急いでいる、売主法人に事業の実態がないなどから、買主と司法書士は違和感を感じていました。
事前の本人確認、書類確認のため決済前日に、印鑑証明書と社長の免許証のコピーを取得したので会社の印鑑証明書については管轄法務局、免許証については警察署に偽造かどうか問い合わせしました。
すると両方とも「偽造」との回答でした。
問い合わせた買主と司法書士は、免許証の偽造を問い合わせした警察から次のように要請させます。
「これは詐欺事件なので被疑者を逮捕したい。明日予定どおり決済現場で通常の取引をするふりをして欲しい。現場に我々警察が張り込んでいるので現行犯逮捕する。」
翌日、何事もなかったかのように、買主、司法書士ともに決済現場に臨み、売主の書類のやり取りを済ませ、まさに決済終了となったタイミングで、「警察だ!逮捕する」となりました。
しかもこの事件、詐欺師である売主側に取引の関係者として弁護士が付いていたのです。もちろん弁護士も逮捕されました。

現代の地面師は売主として登記に必要な書類
1 登記識別情報
2 印鑑証明書
3 本人確認資料(免許証など)
の偽造による「本人なりすまし」です。

 最新のコンピューターや印刷技術での書類偽造は精巧なものとなっていて、それだけを偽造と見抜くのは不可能です。免許証やパスポートなども、本物と見分けが付かないクオリティーのものを偽造できるそうです。

 では、どうしたよいでしょうか。

・「更地」で「決済を急いでいる」には気を付ける。
・少しでも書類に違和感がないかチェックする。
例えば、印鑑証明書に「透かし」が入っているか、光を当てて透かして見るのはマストです。免許証は必ず原本を確認して、ICチップが埋め込まれているか、自分のと比べて変なところはないか、確認します。(後日、偽造免許の見抜き方について詳しく解説します。)
しかし、最近は偽造テクニックが精巧で、書類から詐欺と見抜くのは難しそうなので、
・売主の情報、取引の経緯、状況や側面調査から、「本人なりすまし」と見抜く
しかなさそうです。

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