ここでは、監査等委員会設置会社への移行の際に想定される質問についての回答の一例を、以下に記載します。
Q.どんな会社でも監査等委員会設置会社に移行できますか。
A.取締役が複数いる取締役会設置会社のみが、監査等委員会設置会社に移行できます。
例えば、1人取締役1人社長の会社はできません。
Q.監査等委員と監査役の関係はどのようなものですか。
A.監査等委員会設置会社には、監査役を置くことできません。そのため両者の関係性を検証する余地はありません。
Q.監査等委員会設置会社に移行する、大きなポイントはなんですか
A.監査等委員会設置会社の一番のポイントは、「監査役を置かなくてよい」ということです。 2択でいうと、監査役を置くか監査等委員を置くか、という選択です。
Q.監査役と監査等委員との大きな違いはなんですか。
A.監査機関である監査等委員が、取締役会における議決権を有していることです。
監査役は監査専門の機関なので、取締役会における議決権を有していません。しかし、監査等委員は、取締役の中から兼任で選任されますので、業務執行機関である取締役会にも出席し、議決権を有しています。
分かりやすくいうと、監査等委員は、「取締役兼監査役」です。
Q.監査等委員会設置会社に移行することのメリットはなんですか。
A.
1 監査役会には、3人以上の監査役が必要で、そのうち半数:2人は社外監査役です。これにさらに社外取締役を置くとなると、人選などの手間や費用的にもかなり負担です。
※1参照
2 監査等委員は、取締役会に出席し、業務執行者である代表取締役などの重要な役員の選解任に関与するので、監査機能の強化が期待できます。
Q.監査等委員会の構成はどのようなものですか。
A.監査等委員である取締役は最低3人必要であり、そのうち2人は社外取締役である必要があります。
※1また社外から?監査役会設置会社であっても、監査等委員会設置会社でも、社外役員が2人必要ならば負担は同じでは、となりますが次の意味においては、必ずしも同じではありません。
近時、海外投資家、証券市場関係機関などからの、コーポレートガバナンスの強化の要請により、社外からの視点という意味で、社外取締役を置くことが望まれています。
例えば
「日本企業、社外取締役を増やせ」海外株主が要請
「物言う株主」で知られる米カリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など海外の有力機関投資家が、トヨタ自動車やNTTドコモといった日本の上場企業33社に対して、社外取締役の増員を求める書簡を送ったことが分かった。独立性が高い社外取締役の比率を、今後3年内に3分の1以上に引き上げ、達成されない場合は2017年度の株主総会で取締役選任議案に反対することを検討する。
出典:2014/6/5 2:00日本経済新聞 電子版
これだけではありませんが、上記のような背景から、社外取締役を導入しやすい新たな制度として発足したと考えられます。先述した東証1部上場の企業が、監査等委員会設置会社に移行した理由はここにあると考えられます。
Q.具体的な移行手続はどのようにすればよいですか。
A.大きな流れとしては、
1 監査等委員である社外取締役の候補者の内定
2 監査等委員でない取締役の候補者の内定
3 株主総会にて、監査等委員会を設置する定款変更の決議
4 監査等委員会の役員人事の可決の決議
が必要です。
Q.移行コストはどのくらいかかりますか。
A.
1 登記にかかる登録免許税が、7~9万円(会社の資本金による)
2 司法書士、弁護士への手続費用(各事務所の報酬規定による)
3 その他、会社内部の組織変更の費用(各会社による)
がかかります。
Q.会計監査人との関係はどうなりますか。
A.監査等委員会設置会社には、会計監査人を置かなければなりません。
すでに会計監査人設置会社であるならば、移行に際しての株主総会にて特段の決義がない限り、なにも変わりません。
Q.監査等委員になれる人に制限はありますか。
A.まず大前提として、監査等委員は取締役でなければなりません。そして監査等委員会は3人の取締役で構成し、そのうち2名が社外取締役でなくてなりません。これらを満たす必要があります。
また、監査等委員である取締役は、業務執行取締役または使用人を兼ねることができず、子会社の業務執行取締役、使用人または執行役を兼ねることはできません。
なので、
1 親会社の取締役
2 子会社の非業務執行取締役
3 子会社の監査役
からの選任は可能です。
Q.役員の任期はどうなりますか。
A.監査等委員でない取締役の任期は1年です。定款で取締役の任期を2年としている会社でも1年となります。
監査等委員である取締役の任期は法定で2年です。変更することはできません。
Q.監査等委員会である取締役と、監査委員でない取締役の職務の違いは何ですか
A.どちらも取締役会における議決権を有していることに変わりはないですが、監査等委員である取締役は、取締役会の構成員としてだけではなく、監査等委員会の構成員としても、監査等委員でない取締役の監査をする職務があります。
Q.移行しても執行役員制度は維持できますか。
A.できます。何ら変わりありません。