最近増えている相談は、出資、投資したお金の返還の担保方法です。
どういう背景かというと
1 不動産を買うお金は用意できないけど、優良な物件情報をキャッチできる人が、物件情報をキャッチし、投資家からお金を出してもらって(出資、投資)物件を買う
2 その不動産を売却する
3 得た売却益を投資家と配分する
このような手法のビジネスモデルを取る場合があります。
不動産売買のビジネスをするには、自己資金あるいは金融機関から借り入れをできる信用力が必要となります。
しかし優良な物件情報を入手できる人ならば、自己資金がなくても、不動産売買の事業主・社長となれるチャンスで、個人的によいことと思います。
ただしその際、投資家が出したお金:出資、投資したお金を回収するために、担保を取りたいというリクエストがあります。
上記の場合の不動産を買うための資金調達方法として、投資家からのお金を出してもらう行為は「出資」であって、お金を借りる:ファイナンスとは違います。
確認で、資金調達方法としての「出資」と「借入」の違いですが
出資:利益が発生した場合のみ、返せばよいお金
借入:必ず耳を揃えて返さなければならないお金
例えば、友人が「会社を興すから、お金を『出資』してくれ」という場合ならば、株主として出資して、その会社が儲かったら、配当がありますし、株式を売却すれば金は返ってきますし。
しかし、儲からなかった場合は、配当なしで、株券は紙くずとなり、出資したお金はあきらめざるをえません。
「お金を返せ」とは言えません。一般の株式投資と同じです。
しかし、「会社を興すから、お金を『貸して』くれ」という場合ならば、その会社が儲かっていなくても、「お金を返せ」とい言えますし、友人には法的にお金を返す義務があります。
またお金の返還額として
出資:配当という形で自由に返還額を決められる、例えば儲かった額の50%で折半などでもOK
借入:利息制限法で上限金利15~20%までで、頭打ちあり
つまり、出資はハイリスク・ハイリターンで、借入はローリスク・ローリターンなのです。
お金を借りて物件を買う際、担保方法として、買う物件に抵当権設定する
抵当権設定 年月日金銭消費貸借 年月日設定
と登記するのが一般的でしょう。
しかし、単なる「出資」という行為を原因として、買った物件に抵当権を設定することはできません。抵当権は「債権」の担保としてしか設定できないからです。(「被担保債権」といわれます)
つまり
抵当権設定 年月日出資 年月日設定
抵当権設定 年月日投資 年月日設定
という登記はできません。
しかし、出資を商法の「匿名組合出資」にして、当匿名組合出資契約において、出資金の返還を約し、将来、出資金の返還請求権が発生するように設計します。出資金の返還請求権は債権なので、被担保債権を「匿名組合出資の返還請求権」とする抵当権設定はできます。(抵当権の特徴として、抵当権は「将来発生する債権」についても予約的に設定できます)
つまり投資家が、出資、投資したお金の返還を担保する一つの方法として投資家からの出資を受けて買った不動産に
抵当権設定 年月日匿名組合出資の返還請求権 年月日設定
と抵当権の設定登記をする方法があります。(筆者が照会した東京法務局杉並出張所管内の不動産の場合)
※1
本件は、匿名組合出資について解説する趣旨のものではありませんので、匿名組合出資の詳細な権利関係についは解説を省略しています。
※2
例えば、1億円の不動産を、1億円の匿名組合出資を受けて購入したが、8000万円でしか売却できなかった場合は、この不動産からはどう転んでも8000万円しか回収できないので、2000万円については、やはり出資のリスクを取ることとなります。
(借入の抵当権でも同じですが。)