不動産の評価方法①

評価方法について

不動産の価格を評価するには、取引事例比較法、収益還元法、原価法などさまざまな方法があります。
評価方法の違いにより1つの不動産にいくつもの価格がつけられます。
ここでは「売買取引の結果」から、不動産価格を理論的に導く方法を紹介します。
「同種の不動産がいくらで売れた」、という「結果・事実」から、「ではこの類似の不動産はいくらで売れるのか」を推定します。この方法は不動産だけではなく他の資産のプライシングにも応用可能ですし、実際にファイナンスの世界では一般的に使われているメジャーな方法です。算出方法が多少難解なので、最初に簡易な例としてダイコンの価格を評価するのでちょっと長くなりますがお付き合いください。

【例1】

昨日ある八百屋で3本のダイコンが売れた。売れた価格(円)、重さ(グラム)、鮮度(収穫してからの日数)は表のとおり。

この八百屋の店主の手元に、重さ220g、収穫日から8日のダイコンがある。このダイコンはいくらでうれるか。いくらの評価・価値があるか。

それでは、昨日のダイコンの商いの結果・事実から、この売れる価格を理論的に算出してみましょう。ところで学生の頃の

という数式を覚えていますか。
この式は「Yは、Xにaを掛けたものとbを足した数字」という意味です。
この式にもうひとつXを追加して(とします。)

という式があります。この式を上記のデータ:ダイコンの価格を求める式として加工します。

つまりダイコンの価格Yは、重さに何らかの数字aを掛けたものと
、鮮度に何らかの数字bを掛けて足し合わせ、最後にcを足したもので求められます。
この何らかの数字a、b、cを具体的に昨日のダイコンの商いから逆算して求めるということです。
a、b、cが分かっていれば、どんなダイコンがきても重さと鮮度さえ分かれば、売れる価格が分かることになります。
このような場合a、b、cは「パラメータ」と呼ばれています。
分かりやすくいうとパラメータがダイコンの価格を決めています。
このパラメータを推定する方法として回帰分析という方法があります。
回帰分析を簡単に説明すると、「結果の数値」:Yと「要因となる数値」:の関係を調べ、その関係を分析する統計的手法です。要因となる数値Xを「説明変数」、結果の数値Yを「従属変数」といいます。(結果のYを、要因Xで説明するから。)
この回帰分析 で用いられる推計方法は最小二乗法というものです。
最小二乗法とは「YのデータとXのデータを上記の式を用いて求めたYの推定値の差の2乗平均が最小になるように、
回帰式の係数で推定値の差の2乗平均を微分し0と置いた連立方程式を解いて求める。」ものです。

 これ以上の説明は、回帰分析 ・最小二乗法、解説しても???分かりにくいので省略し、今回もエクセルで簡単に求める方法を紹介します。

 まず下準備としてこちらを確認して下さい。
エクセルにダイコンの商いの結果:取引価格、重さ、鮮度を入力します。
[データ]タブ→[データ分析]→[回帰分析]を選択します。
出てくる画面のY範囲に取引価格のセル、X範囲に重さ、鮮度のセルすべてを選択します。

するとこのような表が表示されます。

赤枠の部分注目してください。ここにX値1と、X値2、切片という表示があります。
じつはこれが先ほどの式のパラメータであるa、b、cにあたります。よって

X値1 = a =   1.14

X値2 = b = -12.86

切 片 = c =      50

これでパラメータが分かりました。つまり

となり、これがダイコンの価格を求める公式です。
重さと鮮度さえ分かればパラメータを測定し価格が簡単に算出できるようになりました。
これに例題のダイコンの数値を代入してみましょう。

計算すると答えは、197.92となります。しかしこの式にはどういう意味があるのでしょうか。
それは「このダイコンは基本50円で、その基本価格に1gにつき1.14円加算し、鮮度として1日経過につき12.86円を減額した数値がダイコンの価格」という意味となっています。

昨日の商いと先ほど求めたダイコンのg単価です。
鮮度がよいと1,06円/gと高いのに対し、15日経過したものは0.67円/gと安くなっています。
直感的になんとなく妥当な感じがします。
今回のダイコンは0.9/gといい単価です。
重さ、鮮度ともになかなかのダイコンだからです。
ダイコンの値付けをする際、単純に重さだけを計って、統一された同じg単価で値付けするのではなく、鮮度を考慮したダイコンごとに違うg単価が採用されています。

 次は過去の実際の取引事例のデータから、要因を逆算して推定し、価格形成式を不動産価格について応用してみましょう。  

不動産の評価方法②へ続く

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