収益不動産についてこの質問はよく受けます。特に所有している物件が旧耐震である場合に多いです。結論からいうと、あくまで私個人の見解ですが、「収益不動産については、地震保険に入る必要はない。」と考えます。
【理由1】
そもそも地震保険は、住宅、共同住宅:レジデンスのみについてしか加入できず、事務所や店舗などについて地震保険にはいることはできません。なので、収益不動産オーナーはみんな、どの物件にも加入している、というような必須的なものではありません。
【理由2】
下りる保険金に限度額があり、建物は5000万円までという上限があります。「どの保険会社の、どの地震保険についてもでしょうか。」と聞き返したくなりますが、答えはYESです。地震保険はどこの保険会社で、どの地震保険に加入しても、商品性、保険料とも同じです。これは地震保険が、法律に基づいて国と保険会社が共同で運営している公共性の高い保険だからです。そのため地震保険で保険会社に利益が生じることもありません。
それでは大地震があった場合、建物損壊によるリスク、損害にはどのようなものがあり、またそれを避けるためにはどうしたらよいでしょうか。
【リスク1:建物という資産消滅のリスク】
これに対するリスクヘッジは地震保険以外にあるでしょうか。答えは「あります」が、ここでは言及を控えます。
【リスク2:建物倒壊による人身事故】
いわゆる建物の所有者責任です。しかし地震を含めて、天災は「不可抗力」ですので、民事の損害賠償の要件(民法第709条)である「故意または過失」にあたらず基本的に賠償責任が生じません。ただし、物件が悪質な違法建築物であり、それを放置していたなどの場合には、所有者の過失により入居者を死傷したと解釈される可能性はあります。
これに対するリスクヘッジとしては、まず建物の現状を、責任ある所有者として把握しておくことです。それには資格ある建築士による建物診断をするのも手です。その結果、有事に備え是正、改修すべき箇所があれば是正、改修しておきます。
耐震補強工事という考えもありますが、耐震工事には莫大なコストがかかるので公共性の高い学校、病院、役所などの不特定多数の人が集まる施設以外は現実的でない場合が多いです。