通常、債権譲渡が行われると、譲渡人から債務者に対し、債権譲渡通知書を配達証明付内容証明郵便にて送付します。これは譲受人が、①債務者対抗要件、②第三者対抗要件を備えるためです。
無担保債権のバルクセールで、譲渡債権の数があまりに膨大でかつその中で回収が見込めない債権が多数のプールや、そもそも期待利益が少額であるプールをしばしば見かけます。このようなプールで債権譲渡通知を行う場合、内容証明郵便作成の手間、1通1200円としても、その時間的、費用的なコストも馬鹿になりません。ではどのようにするのが効率的でしょうか。
1つの方法として、譲渡通知を普通郵便で出すことです。普通郵便であれば作成は内容証明郵便よりもルーティンで作成できますし、費用も10分の1以下で済みます。対抗要件についても①の債務者対抗要件は具備できます。それでは②の第三者対抗要件についてはどう処理をすればよいでしょうか。答えは「債権譲渡登記」(「中野登記」)をします。これについて少し詳しく解説したいと思います。
解説
債権譲渡登記は、法人がする金銭債権の譲渡について、簡便に第三者対抗要件を備えるための制度です。第三者に対抗するためには、原則として確定日付ある証書によって債務者に通知するか、債務者による承諾を得なければなりませんが、この制度を利用し中野登記所に登記をすれば第三者にその旨を対抗することができます。
【ポイント1:法人】
譲渡人:セラーは「法人」のみに限定されています。法人格のない民法上の特例組合である投資事業組合有限責任組合(LPS)や有限責任事業組合(LLP)がセラーの場合、法人格がないのでこの登記はできません。譲受人には特段の制限はありません。
【ポイント2:譲渡】
譲渡について条文上の限定がなく、担保目的の「譲渡担保」あるいは「合併」、「信託」などでも問わないとされています。
【ポイント3:債権】
譲渡対象の債権については、「金銭債権」に限定されています。が、金銭債権であれば、特定金銭債はもちろん、「非特定金銭債権」でも可能です。
第三者対抗要件については分かりましたが、債務者対抗要件についてはどのように理解すればよいでしょうか。債権譲渡登記がされた場合においては、譲渡人もしくは譲受人が債務者に登記事項証明書を交付して通知をし、または債務者が承諾をしたときは、債務者についても確定日付のある証書による通知があったものとみなされ対抗要件が具備されます。まとめると次のようになります。
少し長くなりましたが、無担保債権のプールの場合、普通郵便による債権譲渡通知、プラス債権譲渡登記で対抗要件を備えるのがコスト的に効率的です。