マイナンバー制度について①

平成27年10月:来月から、「マイナンバー制度」の導入がスタートし、国民全員に12桁の個人番号が与えられます。

【マイナンバー制導入の政府のポスター】

出典:内閣官房社会保障改革担当室「マイナンバー社会福祉・税番号制度概要資料」

 マイナンバー制度がどのようなものか分からないけど、なんとなく「恐い」、「反対」と思っている人が多いのではないでしょうか。筆者もその一人です。
これに対し、政府は不安を解消するキーワードとして
・「特定個人情報保護委員会」(「公正取引委員会」や「国家公安委員会」のようなもの)の設置
・「分散管理」 ※後述します
・不正使用については「懲役刑」
などの対策を立てていますが、これだけで安心といえるものではありません。
マイナンバーの狙いについて政府は、「行政の効率化」であり、「国による国民の監視」ではない、としています。
本当のところは筆者も分かりませんが、マイナンバー制への一般的な不安は
[原因]身の上、財産、個人情報などすべての情報が集約され国に管理される
これにより
[結果1]それが漏洩した場合、被害が甚大
[結果2]究極、国が財産情報を把握しているので、確実に財産を召し上げられる
ことへの不安ではないでしょうか。

 今回調査した結果、確かに、社会福祉制度や税金について、ズルやごまかしをしている人にとっては好ましくない制度になっています。
ここで、そもそもマイナンバー制度が創設された経緯から、それは現:日本年金機構の前身である社会保険庁が引き起こした「消えた年金問題」です。
※消えた年金問題
2007年に国会で、年金納付の記録はあるものの、持ち主が分からない約5000件の年金記録があることが発覚し問題となりました。これにより当時の第一次阿部内閣は世論から痛烈な批判を浴びました。
 この問題を解決するために、年金記録を過去にさかのぼり確認作業をすることとなるのですが、氏名、生年月日だけで記録を確認することは、同姓同名、引越による住所変更などがあり、困難を極めました。

 何があっても確実で、そして将来においても信頼できる手厚い行政サービスを提供するため、所得を確実に把握し、税と社会保障制度に共通の番号制度を導入することが検討され、正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(一般的には「番号法」、「マイナンバー法」、)が成立しました。
現時点で、マイナンバー制度導入について、反対している人は多数います。
敵か味方か分からないマイナンバー制度について、以下に調査結果を記述します。
まず、前提としてマイナンバーが登場する場面は、法律(番号法、以下ここで法律=番号法)で限定されているということです。

年金分野
労働分野 雇用保険など
福祉・医療
税分野
災害対策分野です。
 
 これ以外での利用と、民間での利用は法律で禁止されていますので、これ以外でマイナンバーを求められたり、提出することは、今のところありません。(法律改正により、将来的には分かりませんが。)なので、ネットショッピングする際や、何かの新規会員登録する際などに求められることはなさそうです。

 ただし、税分野はすそ野が広いので、例えば、サラリーマンは源泉徴収される税金があるので、会社にはマイナンバーを提出することとなります。
それと預金には利子の源泉徴収があるので、預金している銀行にも提出します。
マイナンバーの利用分野が限定されている建前ですが、税金分野での利用があるので、事実上いろいろなところにマイナンバーを提出こととなります。

 では、どのようなメリットがあるのでしょうか。
各種社会保障、年金関係、医療費の補助または将来新設されるかもしれない育児関係の給付申請をしようとすると、添付書類として住民票、過去の税金関係の資料、その他関連資料を同時に提出することが求められます。

 これらの資料は今住んでいる市区役所、引越前の市区役所、年金事務所、税務署あるいは都道府県庁など、いろいろなところに行かなければ手に入りません。
そのため、利用者側:お年寄りや役所手続きになれていない主婦などには、たいへん分かりにくく何度も役所を行きすることが想定できます。

 また提供側:役所も審査に時間と人手:コストがかかります。
これら利用者側と提供側双方の非効率を解消するために、マイナンバー制を導入します。
すると、役所のコンピューターで利用者の情報が一元管理されているため、各種社会保険手続に必要な添付書類・情報を利用者が用意・提供することなく、手続ができるようになります。

役所間の情報の非対称性を利用した、不正受給なども防ぐことができます。
役所側の時間と人手:コストを削減することにより、他の行政サービスに労力を振り替え、より手厚く、きめ細かいサービスを提供できること、また人件費削減に成功し、理論的には税金を安くすることが可能です。

具体的に、マイナンバー制が導入されると、一人一人に
・「通知カード」
・「個人番号カード」
の2種類のカードが、市区町村役所より交付されることとなります。
カードは2つ?と不審に思いますが、マイナンバー制度には、2つのカードが登場します。
ただし、「個人番号カード」を手に入れるには、各人が手間暇かけて、自分で二段階目の手続をする必要があります。

 まずは第一段階として
市区町村から一方的に、マイナンバーが記載された「通知カード」が送付されてきます。
これには、氏名・住所等の記載はありますが、「顔写真」はありません。(現時点で写真を提出していないのですから当然です。)

 この「通知カード」だけをもって、自分の個人番号を証明する公的資料となり、マイナンバー制導入の目的は達せられます。
先に述べた、社会福祉、年金、税務上の手続をする際、この「通知カード」が必要となります。

 しかし、この「通知カード」はアップグレードできます。
マイナンバーの把握・証明に加え、これに身分証明書を兼ねた機能を持つ「個人番号カード」へアップグレードできます。
この「個人番号カード」は、一方的に送られてくる「通知カード」と顔写真を持って、市区町村役所に出向き、自ら「個人番号カード」が欲しい旨を申請します。(郵送でもできるようです。)

 これで「通知カードは」顔写真入りの強力な本人確認資料として通用する「個人番号カード」となります。「通知カード」は返納という形となります。
ちなみに、顔写真があるため、容姿の変化を考慮し、有効期限は10年で更新が必要となりそうです。

「個人番号カード」には
氏名
住所
生年月日
性別
個人番号
顔写真
が表示され、ICチップに記録されています。

【表面のイメージ】

【表面のイメージ】

出典:内閣官房社会保障改革担当室「マイナンバー社会福祉・税番号制度概要資料」
 近時、どこに行っても「本人確認」の時代です。運転免許証をもっていればよいのですが、運転免許を持っていない人にとっては、「個人番号カード」が、運転免許証と同様、強力な本人確認手段となります。
※「通知カード」には、顔写真がないので、「弱め」の本人確認資料となる可能性はあります。
なんとなく分かってきましたが、この番号が他人に知られたらどうなるのでしょうか。
直ちにどうかなるということはなさそうです。

 マイナンバーは例えるならクレジットカードのカード番号、銀行の口座番号のようなもの。
なので、これらの番号は、暗証番号などと組わせなければ意味がありません。
また、背番号のようなもの。
野球やサッカーの試合を見れば、選手の背番号は一目で分かり、なんという選手か一目で特定できます。
政府から背番号を見て、選手:国民を特定し、プロフィールをすぐに調べられます。ただし、選手のプロフィール:身の上、財産、個人の情報の「選手名鑑」は、政府のデータベースにしかない、というようなことです。

 ところで、外国にはマイナンバー制度はあるのでしょうか。

答えは、あります。
アメリカを始めマイナンバー制度を採用している国は多く、むしろ日本は大幅に遅れての導入です。
後発組だからこそ、すでに導入している国で分かってきた課題や、近時のIT進化対策問題を事前に検証でき対策できた、とされています。
ここまではマイナンバー制度の概要と大枠です。
次回、Q&A方式でマイナンバー制度の各論について掘り下げます。
マイナンバー制度について②に続く

この投稿をシェア

Facebook
Twitter
LinkedIn
この文章に関するご質問、その他ご相談は弊社公式LINEからお気軽にご連絡ください。
メッセージは24時間受け付けております。