差押通知書を紛失した場合の根抵当権元本確定登記

 

 

根抵当権者が、第三者による抵当不動産に対する競売手続きの開始または滞納処分による差押えがあったことを知ったときから2週間経過すると、根抵当権の元本は確定します。(民法398の20①三)

つまり、金融機関が根抵当権を設定している不動産に、税務署の差押えが入ったら、税務署からの差押通知書を受け取った日から2週間経過したら、根抵当権の元本確定は確定します。

この場合、根抵当権元本確定登記は、債務者(担保提供者)のハンコなしの単独申請で、根抵当権者が登記申請できます。(不登法93)

 この根抵当権元本確定登記申請の添付書類は

 

・税務署からの差押通知書原本

・代理権限証書(資格証明書、委任状)

 

のみです。

 

 しかしバブル崩壊以後の金融機関の破綻、合併、店舗の統廃合により保管しておくべき書類を紛失してしまっているケースが稀にあります。この場合:税務署からの差押通知書を根抵当権者が失くして紛失してしまっているときには、単独申請はできないのでしょうか。

 

 まず考えるのが失くした差押通知書を税務署が再発行してくれるかどうかです。しかし国税徴収関係法令により税務署は差押通知書を再発行はしません。

 

ここで、そもそもなぜ差押通知書が必要なのか考えましょう。それは登記官が元本確定登記をするにあたり、その登記に必要な情報がすべて差押通知書に書いてあるからです。

登記官が必要としているものは差押通知書そのものではなく、元本確定したことが確認できる情報であり、それがたまたま差押通知書にすべて記載してあるのです。

それでは制度上、差押通知書の再発行は無理なので、代わりに登記官が必要とする情報の記載がある別の書面を提供するのはどうでしょうか。

 

例えば税務署に対し、根抵当権者、根抵当権の表示及び不動産の表示を明らかして

1 差押年月日

2 差押通知書の発出年月日

の2点をこちらのような照会書というかたちで書面で照会し、その照会に対し、回答書という書面で回答を得ます。その照会書兼回答書を差押通知書の代わりとして添付するという実務上の対応があります。(登記研究615P158~159)

 この照会書兼回答書のように、差押通知書と実質的に同等の内容が書いてある書面であれば、登記官において元本確定の事実について確認でき登記ができます。

 

しかし、すべての場合にこの照会に対し、書面にて回答書を得られるわけではありません。

例えば具体的にいうと、東京国税局はこの照会に対し、口頭での回答はしますが、書面での回答はできないとのことでした。理由は「この手の照会に対し、国税局長印は使えない」というものでした。

 また何らかの理由で、最初に差押えをした税務署から、滞納者の担当税務署が移管、変更されている場合には、現在担当の税務署が差し押さえをしたわけではないので、照会に対する回答は得られないと考えられますし、照会及び回答に対応したことがない税務署は、一からすべてを説明して理解してもらう必要があるので、簡単にことが運ばないかもしれません。

 

差押通知書を紛失し、それに代わる照会書兼回答書の取得も難しそうない場合はどうしたらよいでしょうか。

まずは税務署から書面での回答をもらうことに全力を尽くします。筆者の場合、税務署担当者に回答が必要な旨を丁寧に説明し、登記研究の本件の記載箇所や関係文献を示したりました。

同時に実際には難しいでしょうが、債務者(担保提供者)のハンコが必要な共同申請ができないかどうか検証します。

それらの努力はしたが万策尽きたときには、管轄法務局に相談するしかなさそうです。紛失した差押通知書のコピーはあるのか、税務署とのやり取りの説明また管轄登記所の上級庁がどう判断するかなどで判断は変わってきそうです。




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